昭和天皇の終戦史 (岩波新書)



昭和天皇の終戦史 (岩波新書)
昭和天皇の終戦史 (岩波新書)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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92年刊

昭和天皇独白録に対するものかきとしての「違和感」からこの本は書き出される。
実際ワシントンの国立文書館での研究がその違和感のきっかけということだは
その資料は本書にはない。
その後も宮中関係者の「独白」をもとに考察をすすめることから今日本で流行(?)の
オーラルヒストリー(聞き書き)に近いアプローチともいえる。
そして主に軍部の主張を信用し、天皇の独白よりも軍人の意見を重視して書き進められる。
後は15年間戦争が絶え間なく続いたという視点もとりいられらている。
後半、天皇の海軍に対する評価=宮中人であるという信念をもとに、天皇は海軍に対する評価が高かったとする。
その点からいって92年に出版された本書はソ連崩壊後、新しいマルクス主義歴史学の端緒となったといえよう。
アメリカの占領政策の転換と国体護持。

改めて、アメリカという国の上手さ、悪く言えば狡猾さを認識した。

当初、天皇を頂点とする日本の体制を徹底的に断罪するかに思われた占領国アメリカが、冷戦激化の中の対ソ戦略の一環として、積極的に天皇制を利用していくことを選ぶ。そしてしばしば、皇族も含めた日本側政府高官からの天皇退位発言に神経を尖らせて行く。天皇を守る側に動いたのである。如かして、まだ国際的発言力の弱かったアジアの国々への戦争責任は曖昧にされていった。

アメリカの出方に戦々恐々としていた日本側も只、手を拱いているばかりではなかった。国体護持を合言葉に様々な工作をめぐらして行く。GHQ高官の接待攻勢、東条英機の説得、そして「天皇独白録」の作成。この「独白録」は、決して偶然の産物などではなく、天皇の戦争責任を回避するために、綿密に計算されたものであった。著者の推測であるが、直接の聞き書きの原稿は「聖談拝聴録原稿」の方で、「独白録」はそれに高度な政治的配慮を働かせ推敲したものと思われる。が、ポツダム宣言受諾への天皇の聖断を強調すればするほど、日米開戦を何故阻止できなかったのかという疑問が湧く。両刃の剣であった。

しかし、アメリカ側の意図と日本側「穏健派」の意図は上手くかみ合い、最後は東条英機を始めとする陸軍軍人系高官にその主な責任を押し付けることで決着する。

占領政策の転換は鮮やかでさえあった。戦犯として裁く予定だった者が無罪放免され、或いは刑期を終え、公職追放されていた者も復帰を遂げて行った。私の知り合いの伯父もそうした中で、巣鴨プリズンを出所した後、教職に就き、某市の教育長に任命されたのであった。
考えさせられます

昭和も終わり、平成もあっという間に15年になってしまいました。学校の歴史でも特に扱われず、マスコミでも特に取り上げられることが無かった昭和史と言うものをアカデミックに取り上げる必要がそろそろ出てきたのではと考えさせられる一冊です。昭和史好きには特にお勧めです。



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